ただのでかい山
近年、それなりに山に登っているから、そんな風に高を括っていたけど。
一生に一度はご来光を見ておこうと18日夜から富士山に登ってきました。
ひゃっきんで頭に装着するライトを購入したところ、電池の購入を勧められた。うーんと悩んでいるとなんとくれた。ただでくれた。格好から登山に行くのを察したらしく、ここんところのニュースもあって妙に心配してくれた。おばちゃんに非常に感謝m(_ _)m。ニコタマ改札前です。
新宿のヨドバシカメラには電子楽器などを買いに何度も足を運んでいるけど、目の前に高速バス乗り場があるとはまったく気づきませんでした。収集する情報を意外と限定してしまってるんだなと・。
今回は三連休の初日の土曜の夜。月曜日にゆっくり休めるとあって、バスは臨時便が出るほどの盛況ぶり。臨時便が二台目のバスかと思ったらそうではなくて、合計五台出ました。19時30分発、22時富士山五合目着のバス。外国人が多くいます。
これですね。片道2600円。
府中あたりですか。花火が上がってました。
車内では知らない人との相席に。なんなんで話しかけてみると、彼が意外に話好きで、大いに富士山情報を提供してくれました。写真がその彼、千葉在住、富士山三度目の登山の清水さん。自動販売機で買ってる彼です。掲載許可をもらわなかったので本人と分からない程度の控えめな写真です。
天気予報が冴えなかった点を尋ねると、
「八合目以降は多分、晴れてますよ。以前の二回とも下界は雨降ってましたが、八合目あたりまで行くと、雲の上にでるんです。ご来光もそうですけど、雲海すれすれの雲の感じがほんといいですよ!あれは見ておいたほうがいいです!」
「でも、確かに七合目あたりから雲の上に出るという話もありますけど、出かける前に見た富士山のライブカメラの写真によると、雲は山頂の遥か上空で、さらに山頂には厚い雲の傘が被ってました。」
「いや、多分大丈夫です。」
ライブカメラの写真と、雲の上に出るという証言。どちらが正しいんですかね。
それから、ヨガの呼吸法とか、ジャックマイヨールの話とか、鳥海山のこと、屋久島のことなどなどについて話し込んでいるうちに、少しは寝ようかと思ったのだけど、バスは富士山のふもとに到着します。
そして突如、渋滞にはまったように進まなくなりました。フロントガラスの向こうに見える信号が何度青になっても一向に進みません。しかもその理由を運転手がなかなか説明しません。日ごろ、都会の一分一秒争う電車に乗りなれているこちらとしては、つい、この黙りこくる運転手に何か言いたくなってしまう。ようやく流れた車内放送によると、五合目の駐車場が満車で規制を掛けていると・・。
え?バスまで一般車両と同じに待たされるって、どういう管理?
こぼれそうな言葉をひとまず飲み込みます。清水さんも、こんなことはなかった、この調子だと登山道は大渋滞かもしれない、今日は外れの日かもしれない、と嘆き始める。さらに暫くすると、車内にあったトイレのタンクが満タンに迫っているので、トイレはもう利用しないでほしいと、運転手がアナウンスした。なすすべなく時だけ過ぎてゆき、30分ほど待っただろうか。
ようやく麓を発車するころには、到着予定時刻の22時近くになっていました。結局着いたのは、22時半すぎです。好いていれば、21時半に着いたので、1時間遅れた勘定です。
少しずつ計画が狂い始めていました。
賑わっています。
いよいよ登山開始。闇夜をひゃっきんのライトが照らし出します。どうせならちゃんとしたヘッドライトがよいです。ひゃっきんのライトは3つあったのだけど、そのうちの一つは、「マンガン電池を使用してください」の警告を無視して、アルカリ電池を入れてたことにより、登り始めてすぐに、電球が切れてしまいました。おそらく、パワーが強すぎました。
団体さんです。ツアーだと自由行動は取れずこうなってしまうようです。
既に0:04。まだ6合目についていません。
見下ろせば、夜景が広がっています。写真はぶれてます。登りはじめは感慨深かったけど、次第にそれも普通になってしまいます。山頂方面を見上げると、山小屋の明かりとそれを繋ぐ人の流れか、ナイターのスキー場のごとく光っています。それらは、すぐそばに見えるようで、一向に近づいてきません。
六合目でカップヌードルは500円です。
山小屋は駄菓子屋のようです。ただ、みなそれなりに準備してくるので、食品が売れている感じはしません。
水で炊けるご飯です。前衛的です。
んが、結局これから数時間後の下山途中で食させてもらうものの、試作品といった味わい。ぱさぱさしてます。
クリックで拡大してください。満点の星空です。岩場にカメラを置いての撮影。
七合目あたりから、噂どおり寒くなってきます。
実はこんな大渋滞。山小屋を抜けるところがもっともひどい渋滞となります。
湖面に月光が浮かびます。太陽光には描けない幻影です。
八合目、3100mです。
寒さは予想を上回ります。
4:15分ごろです。日の出は4:41なのに、もう白んできています。
3250m。七合目以降、空気の薄さを徐々に感じていたものの、八合目以降、それはより深刻に。踏み出す足の踵は、支える足のつま先を越しません。少しでも普通に歩こうものなら、動悸が激しくなります。
4:40ご来光直前です。
4:41雲が怪しげに覆ってきます。
この日のご来光はなしです。
以降はずっと雲の中でした。この写真を最後に、5:13から7:46(十合目)までの2時間半、写真を撮っていませんでした。
八合目半ばで、みな、寝不足、足の痛み、呼吸のつらさ、疲れ、などで生きた顔をしていないんです。よそのおじさんなどは相当苦しそうに道にしゃがみこんでします。高山病か、トイレで吐いている人もいたそうです。
僅かにそこでのリタイアも考えましたが、あと一息九合目の山小屋まで頑張ろう、そこで温まりながら考えようということになりました。が、ついてみると九合目には休憩所がありません。そして山頂まで500mとありました。そっか500mならいくか、となりました。
残り500m
そして、この500mがこの登山でもっとも過酷な区間でした。大渋滞で一歩も進まないのです。どこかでつかえているのか、たとえ僅かに進んでも、前の人との間合いが詰まったり、列が横に広がったりで、根本的に進む感じがしないのです。動かないと猛烈に寒くなってきます。軍手は完全に濡れて、手の感覚はほとんどなく、がくがくぶるぶる悪寒が止まりません。
暫くすると、上の方で何か言っている声が聞こえました。怪我人が降りるので道を明けて欲しい、といっています。しばらくすると、腕を包帯でもちあげた女性が降りてきました。頭に巻いている包帯には血がにじんでいます。
突風に吹かれたんでしょうか。
参考にしたサイトには、落雷、落石、突風での滑落に注意とあったのですが、突風が想像を超えていました。その前の週に、落石で駐車場で休んでいた方の車を1トンの岩が貫通し、車で休んでいた方はなくなられたそうですが、1トンの岩が動き出すのが十分に理解できる激しさでした。突風が吹くと、みな手を地面につけ、身をかがめます。そうしないと飛んできた石がぶつかるし、自分自身も飛んでしまいそうな、そんな感じです。まともに風を受ければ、2、3mは軽く動かされます。つまり、斜面のそばだと、十分に滑落もありです。
一向に進む気配がありません。中には、引き返す人もいます。僕らの隊も、そろそろまじでやめないか?と言い始めました。丁度そのころ、ようやく、流れ始めたのです。
九合目からの500m。2時間ほど費やしたでしょうか。
ついに、7:48、十合目に到着。くたびれ果てました。
前日の23時から登りはじめて、およそ9時間、予定から、2時間50分遅れの登頂でした。「寒さの中、太陽の偉大さを感じることができる」という前情報はまったくあてになりませんでした。
山頂につき、まず知人の中山さんから紹介されているヒロアキさん(山小屋のオーナー)のいる山小屋を探しました。トン汁トン汁、と言いながら探していると、どこかの誰かが富士吉田口に降りる道を尋ねていました。それは僕らが登ってきた道であり、また、尋ねられた人が答えられていなかったので、横から「きっとこっちですよ」と言ってみました。すると見覚えのある顔。バスで隣だった清水さんでした。
おーー!!と。
そこで、いつ登頂したのか聞いて見ると、渋い顔をしながら7時であると、
それから続けて、
今日は天候も人の多さも非常に良くない、
上まで登ってこの景色はない、
明後日までの予定だったけど天候が回復しそうにないので今日でもう帰ろうかと思う、
と・・。では気をつけて、アデュ、と別れました。
山口屋でトン汁を頼みました。うまいんだけど、ほぼ味わう余力なし(^^;
ヒロアキさんも簡単にご挨拶したものの、客をさばくのにテンヤワンヤでもう大変。
「みなさーん!!まだ登山は終わっていませんからね!!まだ半分です!!下りに怪我をする人が圧倒的に多いです!!今日はコンディションも非常によくないので早めに下山してくださいね!!!」
と大声で言ったのが、ヒロアキさん。たくましそうな山男でした。中山さん、日本アルプスの件、チャンスがあれば誘ってくださいね!
本来なら、お鉢めぐり、という火口一周も計画していたんだけど、それどころではなく下山することにしました。
雪はまだ残っています。
そして下り始めてすぐに気づいたこと。左ひざを、曲げたり、軸足にすると激痛が走る、どうやらじん帯を伸ばしてしまったようである、ということ。なんとなく登りで分かっていたものの、まさかこれほど痛いとは・・。
普通に下れないのです。とにかく左足は曲げないように、できるだけ軸足にしないように下りました。足場はほどよくジャリで勢いつけて走っても問題ない斜面なのに、地道に歩くしかない、これはきつかったです。
八合目あたりまでくると、登りのとき、雲の中に入ってしまったのとは逆に、下界がうっすらと見え始めます。
こういう岩が落ちていくんでしょう。危険です。
例によって小石をゲット。って富士山のは持って帰っちゃいけないんだっけ?
石を持って帰るのはよくないか
石を持って帰るのはよくないと言われているんですよ(どちらかというと霊的な感じで。)
と、以前にも何度か言われたことのあるセリフをそこでも言われました。そうなのかと僅かにビビリながら考えました。俺の人生は、ひょっとすると、あの石たちがなければ凄いことになっているのに、石の負のパワーでそのすべてが遮断されているのかもしれない。ということか?すべてあの石のせいだったのか!!
いや、でもまてよ、もしその仮説が本当なら、パワーストーンとかいって石を売ってる店は、俺んちと比にならないほど最悪といえるよな、それに石そのものを携帯するのも悪いということになるよな、でもそんなのは聞いたことないな。幸運のアイテムとしてみんな身に着けてるよな。
といういうことで、その仮説は信ずるに値しない、ということになりました。
一件落着です。
それともう一つ、霊的にではなく、そういった人の行為により、地球の環境が変わっていくのが問題であるという視点がありますね。これは、難しい問題と思います。過去のままであり続けることが正しいのか?、それから、自然から生まれた人の行為は自然とは異なるか?という問いに答えられるのは誰でしょう。例えば、人間によって絶滅したオオカミを再生しようとした時に浮かんでくる、一体どの年代の生態系を正とすればよいのか、という問いと似ています。
ここが須走口に向かう最後のコース。ざっくざっくと真っ直ぐに下りてゆける、楽しいコースです。七合目付近から五合目付近まで一気に下るのです。
しかし、これがまた左ひざを痛めているこの上なく過酷でした。
急斜面で、ひたすら長いのです。どこまで下りても景色が変わらないのです。頼むから終わってくれ~、何度も心で訴えました。
遠くの湖面に竜巻がおきているのがみえました。
やっとついに終わったー!と思ったら、またここから2km下ります。
森を抜けると、須走口です。
富士急行もお前もか
須走口から御殿場駅までバスです。バスの運ちゃんがまた白タクの運転手のような、腹の据わった声で、それはいいんだけど、これまた態度が横柄な品格なしで。神奈川のバスもそうなんだが、富士急行お前もか、と。本気で多くを言いそうになったのだけど、みんなもいる手前、噛み殺しておきました。^^;
富士山観光業に携わる人々は、霊峰富士に甘えてはいけないと思う。
不思議な雲でした。田園都市線から。
さぎぬまです。ここまでくると非常に落ち着きます。
パン屋の脇のこの空が好きでよく写真を撮ります。
富士山、なるほど日本一の山でした。想像以上にスケールが大きかったです。
ただ、逆に、もう少し変化があってもよかったかな。と。
そういえば、まだ自分が3歳だった頃、五合目から見た山頂の、あまりの雄大さに怯え、怖いよと泣いたらしい。でも、その感覚、少し正しかったのかもしれないよね。
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