2006年1月7日土曜日

見えなくなった世界

子供の頃、どんな幻想を抱いていたんだろう。

俺は一度だってサンタクロースの存在を信じたことはなかった。神様の存在を信じることもなかった。
幼稚園の頃、怖いものといえば、強盗、地震の地割れ、お化けだった。 ベッドに入り部屋の電気を消すと、頭の中をその三大不安要素がうごうごうごめいてなかなか寝付けなかった。
中でも一番の恐怖は地割れだった。地割れが怖かったのは関東大震災の死因の大半が地割れに飲み込まれものだと母から聞かされたからだ。母は冗談で言ったのかもしれないが、俺には衝撃だった。大地震でミリミリミシミシとひび割れていく地面に大勢の人があれよあれよと呑まれていくんだ。そして這い上がろうとする人々を割れた地面が閉じ始めて押しつぶす。
それから何年もして、地震での一番の死因が地割れでもなく、倒壊でもなく、火災であることを知ることになるのだが、その時感じたえもいわれぬ安心感を今でも強く覚えている。寝る前の三大恐怖の一つが消滅したわけだから俺にとっては大きなことだった。

少しずつ現実を知り、知った分だけ幻想が壊れていく。
そして、知った分だけ客観的に自分を見つめられるようになっていった。 寝る際に部屋の明かりを完全に消せなかったのは、生を受けて大した間もなく、確立された自分がいなかったからかもしれない。現実世界という物差しがなくなる不安は幼少の頃には耐えがたかった。
そしてそれは程度の差こそあれ今でもあまり変わらない。

なにが言いたいかって、見える人には見えたらしいんだ。「信じる」の世界が。

それだけでした。

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